今回の曲集は全曲がクラシック音楽から成っており、親しみやすい曲をできるだけ原曲に忠実にベルのために編曲しました。
これだけ様々なジャンルの音楽が溢れかえる今日においてもなぜクラシック音楽が多くの演奏家達に演奏され、私たちの耳に届けられているのでしょう?
答えの一つに、楽譜という伝達手段が発達した背景があります。つまり楽譜に書き記すという手段が、書物が多くの人たちに読まれるのと同様に、今日でも大勢の人たちが演奏可能なものとしてクラシック音楽を広く世界中に伝えました。
作曲家達の書いた曲は信ずる宗教のためであったり、王宮や一部分の貴族階級のため、尊敬する詩人や愛する人のためであったりと一曲一曲に様々な背景があり、どんな曲の中にも常に、作曲家の人生の中の様々な想いが、音符に切々と込められています。その音符に込められた想いを汲み取り「1つのベル」につき「1つの音程」という個々に独立した音程を持ったベルを1つ1つ奏でながら皆で音楽を作り上げていく。まさにその中にこそミュージックベルの最大の魅力が潜んでいるのです。
今回の曲集では新しい三種類の奏法を考案しました。通常の奏法に三種類の奏法を加え、音符に込められた想いを表現し、皆さんそれぞれの新鮮な演奏を生み出して下さい。
この曲集のタイトルである「Lontano」は、イタリア語で「遠くから」を意味しています。これは、先日惜しくも亡くなられたばかりである現代音楽の作曲家、ジェルジ・リゲティ氏の素晴らしい同名の管弦楽曲から、このタイトルにすることを、ふと思いつきました。まるで何処か遠く向こうから音が浮かび上がり、また遠くへと音が響き、飛んでいく。遠くにある、まだ響きになっていないものの中から、奏者である皆さんが音を掴みとり、また次の音へ響きが遠く遠くまで届くように、音を紡いでいってほしい。そんな願いを、この美しい言葉に託しました。
クラシック音楽の持つ、どんな時代でも変わらずに心に訴えかけてくる感動と、この曲集「Lontano」に込められた想いも一緒に皆さんに伝わることを願っています。
最後に前巻に続き、素晴らしい表紙デザインをして下さったコシノジュンコさんに心から感謝を申し上げます。
上野 陽子
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